Translate

土曜日, 8月 3

ユナイトワンが演出する不満が円満する社会



【シーン】
橋渡剣が黒いコートをみにまとい、喫茶店に入った。そこには、同じく黒すくめの男が彼をまっていた。
その男はユナイトワンの元関係者として橋渡に接触してきた。もちろん、橋渡は独自で相手の身元調査をしており、今回はユナイトワンの元幹部であり退団後、三度の事故に見舞われている。ユナイトワンから命を狙われていることが伺え、信用してよいと橋渡は判断していた。

その元幹部の名はシマダ。シマダは、会話の中で、橋渡が前所属していた会社のOBであることが判明。また、今回の指定された密会場所が、橋渡がよく使う喫茶店ということもあり、密会中普段は口にしない店員から出されたコーヒーに、橋渡しは口をつけてしまう。橋渡は、眠りにおち監禁されてしまう。

これは、監禁される中で、彼の体内に仕込まれたボイスレコーダーが録音していた会話の一部である。

【取材内容】
シマダ「君のようなジャーナリストは、ユナイトワンの厄介者なんだよ。今まで秘密にしてきた団体の内側を、世間に知られてしまっては計画が台無しだからね」

橋渡「命を狙われているというのに、なぜあの団体にそこまでこだわる?」


シマダ「私はユナイトワンに命を解放してもらう代わりに、お前を始末することに同意したのさ。多額の報酬も約束されたからね。いいかい。世の中は結局金なんだよ。

ユナイトワンは、お金をインセンティブに労働を促す、資本主義社会の樹立に成功した。お金で人々は動くんだよ。

そして誰も気づかない秘密はこれさ。この資本主義という思想の根底にあるのは、人々に労働をさせるためには、労働意欲を駆り立てつづけなければならないということ。つまりは、常にお金を不足状態にさせておかなくてはならないということさ。

実は一般市民のお金不足の状態は戦略的に作られてる。先進国の労働者達は週に一日働ければ十分食っていける生産性がある。いや、厳密にいえば、特定産業への投資次第で、すぐにだってその状態を手に入れることが出来る。だが、実際はそうじゃない。なぜかって?そうならないようにユナイトワンは投資産業を絞ったり、特定産業に参入規制をかけたり、値崩れがしないように法律で縛ってるからさ。
特定産業は、だいたいが生活必需産業さ。必需品を通じてなら富を確実に搾り取れるからね。農業、エネルギー、不動産は首根っこを抑えられてしまっている。
参入規制はモノポリーを生み出し、競争がある場合にくらべ、高いコストを払わざる得なくなる。高いコストを払わせて富を吸い上げてしまうんだ。

実はこれら産業は、ほぼゼロコストにしようと思えば簡単にできてしまう。そういった技術がすでき出来上がっているからね。それをあえてしない理由は人々が満足した生活を送られると困るからさ。満足すると人は働かなくなるからね。彼らの思想の中では。

旧ヨーロッパの産業革命以降、人々は裕福になり余裕がうまれた。技術が進歩しきってないあの時代でさえ、一般庶民は満足した生活を送れたんだ。
その結果、人々は労働に専念する代わりに芸術活動に専念した。それがルネッサンスさ。その間、技術の発展が著しく遅れてしまった。自らは技術の革新により、更なる生活水準の向上を望んでいる連中だ。そうなると困るわけさ。特にそのときには、世界の人口をコントロールする技術が絶対的に足りなかった。世界を完全に支配下におく為にも、人を働かせて技術を高める必要が会った。

旧ヨーロッパでの出来事を教訓に、ユナイトワンは、群衆を常に不足状態にするようになった。要するに、働かせる為に、わざと貧乏にしたんだ。

そして、貧乏から金持ちになれるという一筋の夢を与えて労働をコントロールするようになった。アメリカではやたらセレブの生活が特集される。メディア肝いりのドラマはセレブについてのことが多い。これは、群衆を扇動する一つの手段なんだ」

橋渡「そうかい。なるほど。興味深いね。だが、あまりにもペラペラしゃべるとまた命を狙われてしまうんじゃないかい?」

シマダ「ああ、奴らは俺たちのやりとりを聞いてるだろうよ。だがな、お前は今日で喋れなくなっちまう。よくいうだろ。死人に口無しとな」


シマダは、注射機を取り出し、橋渡の腕をまくり注射した。

そのとき、そのくらい隔離された空間に、凄まじい音と共に、光が現れた。何かがその部屋の壁を突き破ったのだった。
バイクに乗ったそれは、シマダをひき、そして、意識が盲ろうとする橋渡を連れ去って行った。

0 件のコメント:

コメントを投稿