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木曜日, 12月 19

エツタンカーメンの陰謀

核兵器が落とされ戦争の幕開けとなった。
一報が入ったのは、大統領が外交から帰る便に乗る直前であった。
もちろん、事前にしらされており大統領が幸運にも核爆弾の恐怖から逃れられるのは織り込み済みであった。
ハポネは情報に踊らされていた。同盟国であるメリケンは、ハポネと秘密協定を結び独自で収集した情報を同盟国内だけで共有することが出来るようにした。これは、国内的にも、外交にも大きな影響が出るようになった。同盟国内で同盟国外の情報を得た場合、その情報が真実がどうかを検証するために、同盟国は同盟国外に直接尋問することが出来なくなった。その場合秘密漏洩に当たってしまう。これはコミュニケーションの低下を意味し、誤った情報が伝わった場合、同盟国と同盟国外の関係を著しく悪化させる可能性があった。もっとも、これはユナイトワンの片腕であるメリケンの策略であった。武器商人であるメリケンは、ハポネと地政学的に対立するスイコウを対立関係にさせ、武器を両国に売りつけることが目的であった。そして、スイコウは、国土面積も大きく、経済成長も著しく、ユナイトワンの世界統治に強く反対する姿勢を保っていた為に、ユナイトワンにとっては脅威であった。そこで、ユナイトワンは対立関係にし、そしてこれは何もただの、牽制の意味では無く、戦争をすることで強大になりつつスイコウの芽を刈り取り、メリケンの属国とする計画の一部であった。メリケンの母体ユナイトワンには、対立するエツタンカーメンも、脅威であったが、両団体の体制構築の方法はほぼ似通っておりお互いに均衡を保ってきた歴史もあり、潰す、という判断には至らない。だが、スイコウに関して言えば、ユナイトワンの大勢に専ら強固姿勢で反発し、その影響力を強めており、ユナイトワンには現体制を揺るがす一大恐怖であった。
しかし、ユナイトワンに関して言えば、スイコウに戦宣をするのはリスクを伴うものであった。強大な軍隊を持つスイコウがハポネのみに反撃するなら未だしも、ユナイトワンの主要メンバーが集うメリケンに集中砲火を浴びせるような事があれば、危険である。そこで秘密保護法という法律を樹立の上、戦宣については極秘にした。情報が出れば、スイコウが世界協定を破りメリケンに攻撃を加えたことが正当化される可能性がある。その後の遂行への世界連合軍による砲撃を踏み切るためにはスイコウを絶対悪としなければならないのである。

ただ、ハポネの飛鳥総理は国民をユナイトワンの繁栄のために明け渡すような、愚人ではなかった。秘密協定に関しては、国家安全保障の理由に加え、経済的協力や、国力を保つための為替政策の継続であった。飛鳥総理は、日本の復活は経済力の回復だと強く信じており、経済力の回復で国を立て直そうとした人物であった。秘密保護法は資源奪還を企むスイコウを牽制するためものでもあったが、飛鳥総理はそれに気づかなかった。
また、保護法によりスイコウがハポネ攻撃の策略を立てていることを、スパイからの情報で得た。しかし、これはメリケンの秘密情報機関が仕入れてきた情報であり、その情報の真意を確かめることはまず不可能であった。つまり、秘密保護法によりはハポネは、メリケンと軍事機密を共有できるようになった反面で、スイコウとの間には大きな壁が出来、信頼関係を損ねることとなる。
現に、スイコウのハポネ襲撃作戦は、実際にあるないは別にして、ハポネを軍事力強化への方向へ舵を切らせたし、外交の姿勢についてもより強いものとなっていった。
ハポネの国内勢力は、スイコウ率いるリベラル派とメリケン率いる保守派の二大勢力で構成されていた。リベラルでも保守でも結果的には他国の政治的、経済的侵略を受けることになるが、国民の多くはそれに気づいていなかった。
政治家といえば、飛鳥総理をはじめ志の高い者で結成された内閣があったが、自らの体制を維持するためには必要経費として、各支持団体に金を流入させなければならず、その無駄に資金と労力を割かれ、また大胆な政策転換が出来なかった。また、今やメリケン率いる格付会社が、ハポネの株価や国債価格の安定を握っており、日本経済全体を鷲掴みにするメリケンには政治的にやはり逆らえないのだった。
メリケンは工作員を(目的を、しらされた工作員ではなく利害関係で首根っこを掴まれメリケンの意図通り動く工作員)国会議員や官僚をとして飛鳥総理の下で働いており、政治的判断を下す前段階として情報を収集し加工し提供することで飛鳥総理の政治的判断を裏で操っていた。飛鳥総理は国益を損ねるようなことを行う人物では無かったが、その何重にもしかけられる罠にズブズブとうまっていった。また、絶対的に正しいと思える政治的方向がみえない中で、人情を誘発するロビー活動や、偏った情報に基づいて行われる提案に飛鳥総理の政治も次第に、いや、今の政治システムの中ではもとから、なのかもしれないが、堕落していった。

その飛鳥総理の下で働く官僚の中に、未来卓三というものがいた。
未来は常に疑問を持っていた。
政治とは何か?
関係者の利害を調整しあるべき姿へ先導するもの、ではない。
政治とは、国民生活の向上に向け活動することだ。その原点に立ち返る為には、やるべきことをしなくてはならない。そう思い立った未来は自らの政党を立ち上げるのだった。その名もネット未来の党。

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